葉の上の目二つ動き飛び上がり 後藤 尚弘
『この一句』
合評会でこの句はもちろん問題になった。季語がない。すなわち兼題の青蛙(雨蛙)が、言葉として現れてこない。これはまずいのではないか、という疑問が呈せられたのは当然である。一方、分かればいい、面白い、という少数意見もあった。私(筆者)は、その中間といったところだろうか。
俳句という短詩は省略によって成り立っている、と言えよう。たった一つの単語や短いフレーズからさまざまな想像が生み出され、大きなロマンを思い描かせることもある。ただしこの句の場合、省略が最も重要な語にまで及んでいる。ユーモアが感じられ、面白いけれど、大賛成とも言い難い。
優れた点は、青蛙の特徴や生態を正しく捉えていることだ。皮膚の色が保護色であることも伝えている。是か非か、と考えているうちに、ナゾナゾが一つ浮かんできた。「葉っぱの上に目が二つ。突然、ぴょんと飛び上がった。これなぁに?」。作者は子供の心を持つ人なのだ、と思った。(恂)
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