『おかめはちもく』
坂めぐり草の芽息吹く麻布山 石丸 雅博
『おかめはちもく』
作者は東京近辺の史跡めぐりが趣味のようで、大学の同窓生などを案内して歩くこともあるそうだ。この句もそんな時に詠んだのではないだろうか。所属する句会ではあたかも「草の芽」が兼題に出ていた。麻布ではどうか、と注意しながら歩くと案外あちこちに草の芽を見つけることが出来たのだ。
麻布は起伏に富んだ地域である。明治時代から台地は高級住宅地となり、低地は職人の住居や商家と住み分けが行われて、後に外国大使館が続々と作られていった。そんな土地のあの坂、この坂とめぐり歩いているうちに、一帯を「麻布山」とするイメージが生れたのだろうか。そこが問題だった。
麻布には空海の開いた名刹・善福寺がある。この寺号が「麻布山」なのだ。「麻布山」と呼んで善福寺を表すこともあるという。麻布一帯か、善福寺なのか。普通に解釈すれば麻布一帯のようだが、そうではない可能性もある。私は麻布という土地の様子を詠んだと見て、以下のように添削した。(恂)
添削例 坂めぐり麻布界隈草芽吹く
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