嘘つきの恋人いとし朧月 藤野十三妹
『合評会から』(日経俳句会)
阿猿 恋人と嘘つきの結びつきが面白い、どんな嘘だったのでしょう。
博明 嘘つきの異性にはなぜか惹かれて、いとおしく感じられるようです。しかもこの句、最後に朧月をもってきて、この恋はこの後どうなるの、と思わせる。
昌魚 恋人の嘘はすぐ分かって、悔しい、憎らしいと思う反面、いとしいという感じ。分かりますね。
誰か 高石(昌魚)先生のコメントだけに驚いた。
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欠席投句だった作者に対し、「打ち首とかギロチンとか、凄い俳句ばかり詠んでいたのに」「心境の変化でもあったのかな」など、さまざまな憶測が寄せられた。さらに「嘘つきの恋人という設定に一ひねりがある」「これは“物語の句”だろう」「現実にあり得ることだ」という具合に、合評会は盛り上がった。
ワグナー研究家で、バイロイト音楽祭には欠かさず出かけていく作者。おどろおどろしさこそ我が命、と見定める道もあるのではないか。この句、「“いとし”が甘すぎるなぁ」というのが個人的な感想である。(恂)
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