公魚の看板さびし山の湖     杉山 三薬

公魚の看板さびし山の湖     杉山 三薬

「季のことば」

 近年、どこの地域でも公魚(ワカサギ)は不漁だという。原因は湖ごとに異なり、さまざまに言われるが、テレビなどでは従前どおり「冬の風物詩」などと呼んで、氷上の穴釣りを紹介している。事情を知らなかった私はそのため、掲句は漁期が終った頃の寂しい風景を詠んだ、と誤解していた。
 ところが作者によると、不漁のため釣り人が来ないのだという。「ワカサギ釣り」で知られる湖へ行っても閑散として、古びた看板ばかりが目立つそうだ。一方、句会の選句表には歳時記で調べ、テレビの“風物詩”を見ての、即ち私の句のような作品が並び、頭の中で描いた句が高点を占めていく。
 この句は三人の方が選んだので、それなりの評価を得た。選者は公魚の不漁を知っていて、句を正しく評価されたのだろう。とは言え詠もうとする句の状況を正しく知ることはなかなか難しい。車の免許証を返し、動きの取れない者は、穴釣り人のように背を丸め、テレビを眺めているばかりである。(恂)

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