さよならを仕舞込みたる忘れ雪     宇佐美 諭

さよならを仕舞込みたる忘れ雪     宇佐美 諭

『合評会から』(三四郎句会)

賢一 なんでさよならをしまい込んだのか、イルカの「名残り雪」を思い出しました。そこから引っ張り出したのか。面白い句です。
有弘 抽象的な詠み方ですね。状態が分かりにくいので、作者に聞いてみたい。
雅博 今回は色っぽい句が多い。これも男女の仲だと思いますが。
進 小さい頃の思い出だろうか。引っ越しのサヨナラとも思える。
諭(作者) 色恋沙汰ではありません。最後の雪の感じを詠みました。雪にとって一年の終りということです。
而云 発想が元々違うのだから仕方がないが、人の別れと解釈したいなぁ。
        *          *        *
 例えば小林一茶の「ともかくもあなた任せの年の暮」。普通なら、ダメな夫としっかり者の妻、というところだ。ところが句の前書きによれば「あなた」は阿弥陀様のこと。一茶はこの句を自分のために詠んだのだろう。
 掲句も誤解を生みやすい詠み方に類する。よくよく考えれば、雪の心を詠んだ、と分かってくるのだが。(恂)

この記事へのコメント