のどけしや日向に猫の裏返り     塩田 命水

のどけしや日向に猫の裏返り     塩田 命水

『合評会から』(番町喜楽会)

春陽子 私は「下駄の裏返し」の句を出したので、猫が裏返っているのもいいんじゃないかなと・・・。
水馬 今回は猫の句が八句もありました。だけど多くの句に「創作」を感じてしまったので、一番自然なこの句をいただきました。
てる夫 ただ一言。「猫の裏返り」が気に入りました。
幻水 猫はのどかな時にひっくり返るらしいですね。そのままの感じがいい。
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 猫は安心しきって警戒心を解いた時に、仰向けになって腹を出す。親や飼い主に対する親愛の表現、媚態でもあるようだ。しかし、いくら危険が無いと言っても、凍りつくような厳寒の候にこんな姿勢を取ることはほとんどない。やはり春も半ばになって、うららかな日差しの注ぐ昼日中にこうした恰好をする。この句はそういった仲春の長閑さを素直に詠んでいる。こういう猫と遊んでいると、このところの世の中の嫌な出来事をすっかり忘れてしまえる。これも俳句の効用の一つであろう。(水)

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