風光る鯉と分け合ふパンの耳     横井 定利

風光る鯉と分け合ふパンの耳     横井 定利

『合評会から』(日経俳句会)

阿猿 氷が融けて、冬の間隠れていた鯉が出てきたので、パンの耳でもあげようかなというところでしょう。春の嬉しい気持ちが「風光る」の季語とともに詠まれています。
庄一郎 「パンの耳」が上手い。自分が食べた切れ端を鯉にやったのですね。
ヲブラダ なんとものんびりした気分になる句ですね。パンをちぎる所在なさげな仕草が目に浮かびます。
正市 季語が動くかも知れないが、浅春の感じがよく出ていますね。
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 パンは、耳を切り落としていないサンドイッチだろう。柔らかくて白い部分は食べ、硬めの端が残っている。句の主人公はここで眼前の池を眺めて「さて」と考えた。鯉が群れていた。残っていたパンの耳の半分ほど「分けてやろう」と池の鯉に投げたが、残りは自分がもぐもぐと食べてしまった。句の意味はそういうことになる。
 こう解釈し「笑われるかな」と思った。しかし「耳も食べるの?」と問われたら、私は「そうだ」と胸を張りたい。敗戦後の食糧難の頃、耳も御馳走だった。ようやく鯉と分け合う時代になったのだ、と。(恂)

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