一里一尺雪深めゆく北信濃     嵐田 双歩

一里一尺雪深めゆく北信濃     嵐田 双歩

『この一句』

 地方独特の言葉や言い回しを俳句に取り込んで、それがツボにはまると、実に印象深いものになる。この句の「一里一尺」はまさにその成功例だろう。
 北信地方は上田、長野の平野部を流れていた千曲川が飯山市に入り栄村、野沢温泉あたりを巡って新潟県十日町市の平野部に出て信濃川と名前を変えるまでの、谷間の狭隘部。スキーの名所でもあるだけに名うての豪雪地帯だ。「一里行けば雪が一尺深くなる」と言われている。
 この近くに生まれ育ち、晩年を過ごした小林一茶の「これがまあつひの栖か雪五尺」はあまりにも有名だが、「はつ雪やそれは世にある人の事」(初雪なんて言って風流めかしているのは世の中を楽に過ごしている連中の事さ)という、さらに一茶らしい句も残している。
 新聞カメラマンとして勇名を馳せた作者は豪雪の北信地方も自らの足で踏み分けたのだろう。地元言葉を置いて見たままをさらりと詠んでいるが、その背後には一茶句のニュアンスも潜んでいる。(水)

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