湯豆腐や葱は嫌ひと言ふ男      須藤 光迷

湯豆腐や葱は嫌ひと言ふ男      須藤 光迷 

『この一句』

 句仲間の誰かのことを詠んだ句が、句会にたまに登場する。褒めるのなら無難だが、けなしたり揶揄したり、というのは相当難しく、句会に出すにはためらうような場合もあるだろう。この句、投句に勇気が必要だったかも知れない。なにしろ該当すると考えられる人物は、句会の主宰者だったのだ。
 合評会のコメントから「そのこと」を知る人は案外少ないことが分かった。「湯豆腐の薬味の葱が嫌い? そんな人がいるのか」「我儘に育ったのかな」「そういう人がいてもいいとは思うが」「この人、私はあまり好意的に捉えていません」。という訳で、この句の評は句中の人物評が中心になったのであった。
 主人公は誰なのか? 句を選んだ人の思いはおおよそ同じらしい。それともう一つ、誰の作かも気になるところであった。作者が「すみません、私の作でした」と白状した。すると主人公は「湯豆腐や冷奴には、私も葱を使いますよ」と真相を明かしてあっけらかん。数人が「なんだ、つまらない」と反応した。(恂)

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