色あせた鐘楼一円曼珠沙華     鈴木 好夫

色あせた鐘楼一円曼珠沙華     鈴木 好夫

『おかめはちもく』

 古い寺の古びた鐘楼。太い四本柱はひび割れ、屋根瓦も苔むし古色蒼然としている。鐘楼を載せた壇の石垣の裾には雑草が生い茂り、そこかしこに曼珠沙華が花咲かせている。その鮮やか過ぎる赤色が一層、鐘楼の古びた様子を際立たせているようだ。と、まあこんな光景が浮かび上がって来る。
 少子高齢化に伴って檀家が年々少なくなって行くから、有名寺院はさておき、やりくりに苦労する寺が増えている。境内の清掃や景観維持に手が回りかねるのだ。曼珠沙華は本来は寺の裏側の墓地周辺にあるもので、本堂、山門、鐘楼の辺りにはあまり生やさなかったものなのだが、いつの間にかはびこりだしたのだろう。それとも最近の曼珠沙華ブームを良いことに増えるに任せているのかも知れない。
 寺の今日的風景を描いたユニークな句でとても良いのだが、「一円」に首を傾げる。「鐘楼の周囲一面」ということなのだろう、間違いではないのだが、普通は「関東一円」などともっと広い地域を言うときに使われる言葉だ。ここはやはり『色あせし鐘楼囲む曼珠沙華』などとおとなしく詠んだ方が良いのではなかろうか。(水)

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