封印の郵便受けや曼珠沙華     大熊 万歩

封印の郵便受けや曼珠沙華     大熊 万歩

『合評会から』(日経俳句会)

実千代 封印の郵便受けというさびしい光景が「曼珠沙華」に合っている。
好夫 大家さんがアパートを出て行った人の郵便箱に、郵便物を入れないでくれと封印した。そこに曼珠沙華が咲いている。景が見えるようだ。
水馬 人は死ぬが曼珠沙華は枯れても翌年花開く。その対比が面白い。
而云 曼珠沙華はどんどん増える。今日も来るときに見たが、主人が亡くなった家の庭に曼珠沙華がいっぱい咲いていた。そんな景が見える。
反平 郵便受けに目を付けたのがいい。
青水 上五の「封印」が効果的だ。季語が効いている。
ヲブラダ この句を寂しい句と読むのが普通な気もするが、自然の美しさは人間の事情に関わらないとも読める。
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 曼珠沙華は日陰を好む植物と思われがちだが、日当たりの良い肥沃な土地だと二三年でこんなにもと言うほど増える。郊外住宅地に空き家の増える昨今、こうした情景が年々珍しくなくなっていく。(水)

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