ほっこりとお隣りさんから南瓜椀     藤野 十三妹

ほっこりとお隣りさんから南瓜椀     藤野 十三妹

『この一句』

 「こんなもの煮たので、お口に合わないかもしれませんが・・」。隣の奥さんが南瓜の含め煮を持ってきてくれた。実に懐かしい。煮南瓜とは何年ぶりだろう。喜んで押し頂いた。
 「向こう三軒両隣」の昔はいざ知らず、防犯カメラのついたマンション住まいでお総菜の遣り取りとは、実に珍しい。ほのぼのとした気分になる。まさに上五の「ほっこりと」がぴたりとはまる句である。
 昭和も四十年代半ばまでは、下町には木造の長屋が沢山残っており、山手の住宅街でも台所口や縁側は開けっ放しだった。今ではマンションにせよ一戸建てにせよ、玄関口のボッチを押してピンポーンと鳴らし、内側ではモニター画面で訪問者を確かめ、やおらドアを開けるといった状況。
 この句を見た時、「嘘だー」と思った。しかし読み返すうちに、満更ウソでもないような気がしてきた。もしかしたら、隣近所全て高齢家族で自然に“隣組”が再現したのかも知れない。隣が誰だか分からないのがちっとも不思議では無い今日の都会の一隅に、こうした一コマがあると思っただけでほっとする。(水)

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