わが道は闇の先にと蟇歩く    大倉悌志郎

わが道は闇の先にと蟇歩く    大倉悌志郎

『この一句』

 蛙は風貌や動作などが何となく人間に似ている。ことに蟇(ひき・ひきがえる)になると人の奥深さに例えるような句がよく詠まれる。蟇を兼題としたこの句会では「思ふこと腹にいっぱい蟇」(水牛)、「蟇しあわせなのか問ふてみる」(睦子)、「鏡見て冷や汗流す我も蝦蟇」などの句が登場した。
 掲句もその一例である。一読、蟇は闇を目指しているのかと思ったが、さにあらず。闇の先を目指しているのだ。しかし何処を目指していくのか、には触れていない。彼はただひたすら何かに向かって、のそりのそりと歩いて行くのだ。その辺りの重厚感が、この句の魅力と言えるのだろう。
 ふと「蛙合戦」に気づいた。蟇は真夜中に特定の池に集まり、互いに争うのだという。一茶はこの様子を「やせ蛙負けるな…」と詠んだが、それが雌雄の交尾を表すと分かって、この句は教科書から姿を消したとか。しかし「蛙合戦」は春の季語だった。謹厳な作者が詠むようなことでもなかった。(恂)

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