荒川にカーテンを引く驟雨かな     向井 ゆり

荒川にカーテンを引く驟雨かな     向井 ゆり

「この一句」

 夏の真っ盛り、気温の上昇に伴って積乱雲が発達し、空が真っ暗になったかと思うと雷鳴と共にざっと降って来る。これが「夕立」で「驟雨」とも云う。
 あまり激しくない夕立はさっと降ってさっと上がり、暑熱を消し去ってくれるから、むしろ歓迎される。しかし、「集中豪雨」という別名で呼ばれるようなひどい降り方になると、電車を止めてしまったり、道路が冠水して車が通れなくなったりして、処々方々に迷惑を及ぼす。近ごろはそうした乱暴な夕立が多くなってきたようだ。
 この句は荒川の夕立の様子を詠んだ。作者によると、住まいの在る川口市の側から見た光景がそうで、物凄い土砂降りで対岸の東京方面が全く見えなくなってしまったという。それを「カーテンを引く」とは、実にうまいことを言ったものだ。
 こういう激しい降り方を眺めていると、なんだか魅入られてしまい、巨大な滝の中に閉じ込められたような気分になって、茫然としてしまう。(水)

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