炎帝と現場検査や足場揺らぐ     高瀬 大虫

炎帝と現場検査や足場揺らぐ     高瀬 大虫

『季のことば』

 歳時記によると「炎帝」は「夏」の傍題で、つまり夏の季節そのものを表す。ところがそう決めているのは歳時記だけのようだ。辞書類では「夏を司る神」となっており、実作を見ても「炎帝」を神格化、擬人化した例が少なくない。「冬将軍」に対する「炎帝」のイメージが出来ているのだ。
 この句はその一例である。ビルの建設現場のようで、まだ鉄骨がむき出しというような状況なのだろう。一歩一歩慎重に足を運んで行くと、真夏の日差しが照りつけ、足場が揺らぐかのようである。炎帝が現場全体を支配している、というのが、建築家である作者の偽らざる感触なのだろう。
 テレビの気象予報では鎧兜に身を固めたイラストの「冬将軍」が登場し、すでにお馴染みである。そしてこの頃、冬将軍と同じような格好の「夏将軍」というキャラクターが出現してきた。この調子で行くと、「夏将軍」という季語が生まれないとも限らない。炎帝の将来や如何に。(恂)

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