翡翠や真一文字の青つぶて     和泉田 守

翡翠や真一文字の青つぶて     和泉田 守

『この一句』

 句会に出された元の形は「青つぶて真一文字の翡翠かな」だったが、「ひすいかな」では今どきの読者には宝石の翡翠とごっちゃになり、誤解が生じるのではないかといった意見が出て、作者はそれを取り入れ掲出句に改めた。
 しかし「翡翠(ヒスイ)」は元々カワセミのことであり、宝石の翡翠はこの鳥の色から出たという話さえある。古代中国人はこの美しい小鳥を殊の外愛でたようで、「翡」はオスのカワセミ、「翠」はメスのカワセミと区別していたとか。ということであれば原句のままでも十分通用するのだが、「なるべく分かり易い方がいいですから」とあくまで優しい作者である。
 「かわせみの飛ぶ姿はまさにこの通り」(涸魚)、「カワセミの素早さを巧く捉えています」(大虫)と、観察力確かなこの句を推奨する人が多かった。
 川や池、用水路などに棲む魚や水棲昆虫を食べる翡翠は、水質汚染の日本の田園には住めなくなってしまった。それが近ごろ、また姿を見かけるようになった。自然環境浄化が進んだ結果だろう。嬉しいことである。(水)

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