六月の窓に広がる無力感     深田 森太郎

六月の窓に広がる無力感     深田 森太郎

『この一句』

 日経俳句会半期に一度の合同句会に出た句で、好評を博した。「共謀罪法案の成立を阻止できなかった無念さを込めたのかも知れませんね。しかしここは、雨が降っているのか曇り空か、梅雨時の鬱陶しい感じを詠んだものとして頂きました」(光迷)という選評があって、なるほどそうした時事句としての側面も感じられるなあと思った。
 安倍政権は絶対多数議席を背に、首相始め各大臣の議会答弁には心がこもらず、政策遂行もおざなり、与党議員の不祥事も相次ぐなど、慢心、傲岸のそしりを免れない場面が多々見受けられるようになっている。にも拘わらず、各新聞の世論調査では、安倍政権を支持すると答える人が相変わらず4割台の高率である。これ一重に「他に支持する党が無いから」である。しっかりした野党の無い国は必ず滅びの道を辿る。そんなことを思わせる句である。
 しかし、そうした現世の生臭さを忘れて、ただただこの句のうたう575をなぞるだけでもいい。六月という月の、気だるい、やる気の起きない雰囲気を十二分に伝えている。(水)

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