初夏の朝眩しささらにたまご焼き   深瀬 久敬

初夏の朝眩しささらにたまご焼き   深瀬 久敬 

 『この一句』

 関東地方は梅雨入りしてもう二週間も経つのに、ばかに心地よい陽気が続いている。雨が降ってもすぐ晴れて、初夏というようより、秋がやって来たのか、と疑いたくなるような日もある。この句を句会で見たのは梅雨入り以前だったが、このところ朝食の卵焼きを見るたびに、「眩しささらに」が浮かんできてしまう。
 作者はこんな思い出を語っている。「子どもの頃、玉子焼きはいつも焦茶色のお皿に載せられて食卓に出てきた。その皿と黄色に光り輝いている玉子焼きとのコントラストが妙に記憶に残っています」。目玉焼きなら真っ白な皿がよさそうだが、白いご飯と出し巻き卵の場合を考えると、こげ茶色の皿はなかなか渋い。
 さて、この句、南東の側に広い窓のあるDKを想像させる。テーブルの上には奥様の作った卵焼きが、いつものように置かれているのだろう。朝日が差し込めば、その黄色は昨日にも増して輝くばかり。朝食のおかずと言えば、先ず卵焼き。そしてまた好天気。いい一日が約束されたようなものである。(恂)

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