春深しますます目立つ厚化粧     植村 博明

春深しますます目立つ厚化粧     植村 博明

『この一句』

 「連想」は俳句作りの一つのポイントである。芭蕉の昔から言われた「取合せ」とか「配合」によって生じるのだが、対応する二つの言葉を見てすぐに「なるほど」と納得するようでは余り面白くない。しばらく句を眺めていると、じんわりと心の中に生れてくる、理屈を超えた連想が最上ではないだろうか。
 この句から、私はそんな類の心の反応を得た。紫外線が強くなって来る頃だから、女性は厚化粧する、というようなことではない。「春深し」と「厚化粧」。何となく共通点がありそうで、なさそうで・・・。やがて往く春を思う年配女性といった具体的な解釈に進みがちだが、さらなる奥があるように思える。
 句会の合評会でのこと。この句に対して「都知事ではないか」という声が飛び出したので、非常にびっくりした。言われてみれば「ますます目立つ」あたりには、確かにそんな雰囲気も感じられよう。俳句は「言葉足らず」の文芸である。そのために生じる連想の数々も俳句の奥深さ、と思うことにした。(恂)

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