春深しスマホの少女わき見せず     井上 庄一郎

春深しスマホの少女わき見せず     井上 庄一郎

『おかめはちもく』

 駅のホームでも電車内でも、スマホに取り憑かれたようになっている人たちが目につく。歩きながらもやっているから危険この上ない。これは「歩きスマホ」とか「ながらスマホ」と言われ、今や若者を中心に常態化してをり、日本ばかりでなく全世界的な現象だという。
 人にぶつかる、自転車に接触する、そこまで行かなくても、歩みが遅くなったり蛇行したりするから、繁華街では人の流れがおかしくなり混雑に輪を掛ける。駅ホームのスマホ歩きは本当に危険で、しばしば転落事故を起こしている。死んでしまう本人は自業自得だが、それによって電車が長時間不通になってしまい、周囲に及ぼす影響は甚大だ。
 この句はスマホ少女を前に半ば呆れているのである。ただ、「わき見せず」だと「一生懸命」といった言葉が続き、感心々々といったニュアンスになる。ここはよくもまあこれほど傍若無人にといった感じを匂わせた方が句として幅が出るのではないか。「わき見せず」を「わきも見ず」としてはいかがであろう。
  春深しスマホの少女わきも見ず              (水)

この記事へのコメント