遅れたる時計そのまま春深し     大熊 万歩

遅れたる時計そのまま春深し     大熊 万歩

『合評会から』(日経俳句会)

てる夫 これはまさしく春らしいのんびりした感じです。我が家にも遅れた時計があって、忙しいとなかなか調節というわけにはいかない。
哲 「遅日」という季語があり、時計が多少遅れてもいいじゃないかという感じで、のんびり過ぎていく春の雰囲気が出ている。
阿猿 あくせくしない感じが出ているなと。
昌魚 「遅れた時計」と「春深し」がピッタリ合っていい句。
好夫 気怠い雰囲気がいいのかな。遅れた時計と春ということで採りました。でも、今は電波時計になってこういうことはないのじゃないか(笑い)
ヲブラダ 気怠い春の日の感じを道具立てで示していて見事です。
          *       *       *
 「古時計」「柱時計」「振子時計」そして「遅れた時計」。俳句の格好の材料としてこれまで嫌と言うほど詠まれてきている。しかし、こうして出て来ると、またまた大いに人気を呼ぶ。みんなの心の裡にある図像が呼び覚まされるからなのだろう。(水)

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