城址に春の気満載バスツアー 杉山 智宥
『この一句』
俳句仲間連れ立って四月上旬に八王子城址を訪ねた折の句である。東京都の内とは言え、かなり山深いこの辺は平均気温が都心より二、三度は低いのだろう、ソメイヨシノがまだ七分咲きで、梅が散り残り、しきりに鳴き交わす鶯もまだ十分に修練を積んだとは言えない囀りであった。城址散策にもコートやジャンパーが必要なくらいのひんやりとした気温だったが、大阪のオバチャン連中の一団がバスからぞろぞろ降り立って、あたりはいっぺんに熱気を帯びた。
「近頃の城址探訪ブームにはビックリ。大阪からわざわざバスツアーで関東まで来るとは。『春の気満載』が、春の盛りとウキウキ気分を表現して不足がありません」(正裕)、「春を楽しもうとの遊び心一杯の女子軍団がバスを連ねて来襲。彼女らが春を運んで来たんですね。女性上位を語る面白い句です」(臣弘)。
作者も城巡りなどには一家言ある人なのだが、オバチャンたちの勢いに呆気にとられたようで、その気分をそのまま詠んだところが面白い。ただ、「春の気満載」よりは「春気満載」の方が勢いが感じられるように思うが。(水)
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