春愁を炭酸で割る午後のバル 廣田 可升
『合評会から』(番町喜楽会)
百子 「炭酸で割る」がいいですね。春愁を断ち切る感じがします。
光迷 カンパリソーダかな。それにおいしい生ハムがあれば、春愁なんてどこかへ行ってしまう。
大虫 炭酸とバル(南欧風の軽い居酒屋)ですか。もやもやはすぐに晴れるでしょう。
誰かと誰か 「しゃれている」「そうですね」の声。
冷峰 春愁を炭酸で割ると、どうなるのかな。私は「午後のバル」に乗りましたが。
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「春愁」は歳時記に「三春」とある。初春、仲春、晩春のどれにも適応する季語ということだが、行く春を惜しむ気分とどこか通じているようにも思われる。洒落た居酒屋に独り、例えばイタリアのリキュール、カンパリを注文し、ソーダ水をグラスに注ぐ。グラスの中に潜む春愁は、プツプツと湧き上がる気泡とともに空中に消えて行くのだろう。バルに客はちらほら、薄めのカーテンから洩れる光は初夏を思わせるほど。合評会の「しゃれてる」の声はまさにその通り。「午後のバル」も確かに効いている。(恂)
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