蓬餅すり鉢おさえて手伝う子     村田 佳代

蓬餅すり鉢おさえて手伝う子     村田 佳代

『おかめはちもく』

 昔、蓬餅や草団子はお母さんと子どもたちとの合作であった。まず蓬摘みから始まる。小さな子は蓬もヨメナもその他の雑草も区別がつかない。お兄ちゃんやお姉ちゃんに「ダメでしょ」などと言われながら、でたらめに摘んでいる。
 とにかくこうして親子で摘んだ餅草が笊に一杯になると持って帰り、きれいに掃除して熱湯にくぐらすと鮮やかな緑色になる。これをお母さんが俎板に取って、とんとんと刻み、擂り鉢に移してごりごり擂る。蒸籠には上新粉(米の粉)を練ったものが蒸し上がり、それを餅草の入っている擂り鉢に入れて、擂粉木でつんつん搗いたり、ごろごろ挽いたりする。子どもたちは代わりばんこで擂り鉢を抑えている。見る見るうちに緑の香しい草餅が出来上がる。
 それを適当に丸めたり、糸で切ったりして別に作っておいた小豆餡をまぶす。あるいは平に伸ばして中にアンコをくるんで丸め、本格的な草餅にしたりする。どんな形でも、こうして母子で作った草餅は美味しさも格別である。
 この句は楽しい情景をそのまま詠んでいて素晴らしい。ただ、「すり鉢おさえて」とわざわざ「て」を添えたのがリズムを崩している。「て」を取ってしまうだけで上々の句になる。
  蓬餅すり鉢おさえ手伝う子         (水)

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