立春の光まばゆき九品仏     池内 健治

立春の光まばゆき九品仏     池内 健治

『この一句』

 立春の光りが鬱蒼と茂る大樹を抜けて、三棟の阿弥陀堂の中に鎮座する九体の金色の阿弥陀如来を輝かす。世田谷区奥沢の九品山浄真寺。浄土宗の名刹で、広い境内は春は桜、秋は紅葉と、近隣住民の憩いの場にもなっている。
 ここは我が家の菩提寺だから、物心ついた時から春秋の彼岸、お盆、それに親族親戚の葬儀や法事のたびに訪れている。九品とは何とか言うお経に説かれている、極楽往生する際の等級らしい。清く正しく篤い信仰心で念仏一途に生きた人は「上品上生(じょうぼんじょうしょう)」、つまり極楽の中でも一等地に住める。段々と下がっていって、極悪非道の輩でも念仏を唱えさえすれば極楽に行けるようだが、しかしそれはやはり九番目の「下品下生」である。「だからね、真面目に暮らさなければいけない」と言われた不良中学生は、「死んでからも階級がつくのかぁ」とがっかりした覚えがある。
 九品仏を祀った寺としては京都の浄瑠璃寺(九体寺)が平安末期の創建で歴史的には断然古い。この句は浄瑠璃寺か浄真寺かはっきりしないが、どちらでも良かろう、早春の清冽さを感じさせる佳句である。(水)

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