立春の画布に明るい海の青     野田 冷峰

立春の画布に明るい海の青     野田 冷峰

『おかめはちもく』
 
 この時期、海岸に出てカンバスに直接、絵を描くことはないだろう。すると場所は画家のアトリエか。ある人物が絵筆を動かしており、作者は画家の後方から、青い油絵具がカンバスに広がって行くのを眺めている、という状況だろう。立春、カンバス(画布)、海の青。早春らしい句だと思う。
 しかし「明るい」という形容詞がいかにも安易で、一工夫欲しい。「明るい」の同類なら「煌めく(きらめく)」とか「輝く」などがある。さらに発想を変えて「画布を埋め行く」とか「画布に故郷の」など、いろいろありそうだが、添削候補を点検するうちに、考えが変わって行った。
 作者は小手先芸を嫌って、何のてらいもない平凡な「明るい」をあえて選んだのかも知れない。「画布に故郷の」などは添削のやり過ぎと思えて来た。しかし「輝く」なら悪くない。「煌めく」ほどの気取りがないし、「明るい」より“輝いて”見えた。この語が作者の意に適うかな、と思いながら――。
 添削例  立春の画布に輝く海の青 (恂)

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