外は雪胸に冷たき聴診器     澤井 二堂

外は雪胸に冷たき聴診器       澤井 二堂

『この一句』

 鋭い感覚の句だ。雪が降っているからといって、空調完備の病院内がいつもより寒いはずはない。それでもなおかつ、こういう日の診察は、胸に当てられた聴診器を殊の外冷やっと感じる。
 胸前をはだけて聴診器を当てられる時、大概は医師の顔など見ずにあらぬ方に視線を這わせる。なんとなく不安感があって、医師の背後の窓の外を眺めたりするのだ。暗い空から雪がしんしんと降って来る。
 「ああ、変わりはありませんよ」と医師の声は極めて事務的なのだが、そう言われるとほっとする。
 「いろんな場面が想像できる句ですね。学校の健康診断かな、イメージとしては幸せ薄い少女とか・・」(哲)という句評もあって、平成二十八年歳末の日経俳句会合同句会は笑いに包まれた。もちろんこの句会の顔ぶれからすれば、この句の主人公は身体のあちこちに不具合を抱えた高齢者と考えるのが自然だが、確かに心細い表情の少女を思い浮かべた方が、句としては面白くなる。(水)

この記事へのコメント