たぷたぷと君に注ぎましょ今年酒     齊山 満智

たぷたぷと君に注ぎましょ今年酒     齊山 満智

『この一句』
         
 女性である作者が、「君」の盃にたぷたぷと新酒を注いでいる。作者と「君」はとても楽しそうだ。句を見てこちらも嬉しくなってきたのだが、念のため調べたら、おかしなことになった。広辞苑などいくつかの辞書に「たぷたぷ」は「太って肉にしまりのないさま」などと出ていた。そして、その次の項にある「だぶだぶ」を見たら「液体が容器の中で揺れ動く音」と説明しているのだ。
 やや茫然となった。新酒を「だぶだぶと」では、何とも締りのない句になってしまう。さらに調べてみたら、「たぷたぷ」は山形など東北地方の方言で、「だぶだぶ」(水の揺れ動く状態)を意味するという。この句に二つの擬音語のどちらかを使うべきか。私は語感から「たぷたぷ」だと主張したい。
 辞書に出ていないので、ちょっと慌てたが、擬音語は辞書の記述を超えたものであるに違いない。例えば萩原朔太郎の詩にある猫の声だけでも驚くほどの多様性を見せている。センスのいい擬音語なら、辞書になくても「OK」なのだ。特に女性に酒を注いでもらうなら「たぷたぷ」で行きたいものである。(恂)

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