燈台の裾にフリルや花薄     中嶋 阿猿

燈台の裾にフリルや花薄     中嶋 阿猿

『この一句』

 とても洒落ている。絵本を開いた時のほんわかとした感じである。小さい頃連れて行ってもらった岬の、草原の遥か向こうに見えた真っ白な燈台を、突然また見せられたような思いもする。
 フリルというのは、最近あまり流行らないファッションのようだが、子供服や婦人服の襟元や袖口や裾に、ひだを付けて波形に花びらを寄せたような飾り縁のことであろう。
 岬の突端に白亜の燈台が一本、その裾を薄の穂が波打つフリルのように縁取っている──それ以外のことは一切述べていない。それこそ、「なんだ、燈台の裾に薄が茂っているというだけのことじゃないか」という悪口が出そうである。
 「裾にフリルや」という措辞に、この句の命がある。岬の燈台という、これまでに嫌と言うほど詠まれて来た句材がこれで生き返った。このように誰もが「見た事のある景色」、言い古された素材を詠んで新鮮さを感じさせるには、こうした表現の工夫が欠かせない。(水)

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