天空の城址は遥か秋の声     加藤 明男

天空の城址は遥か秋の声     加藤 明男

『季のことば』

 秋になると聞こえてくる「秋の声」とは。日経俳句会八月例会に出た作品から拾うと、蜘蛛の巣の張る大樽の中から、ブリキの如雨露から、トーストを焦し目に焼いてみたら、耳飾りを外す左手から、などなどなど――。つまり俳句を作る人が「聞こえてきた」と思えば「秋の声」なのである。
 本当の音は聞こえてこなくてもいい。むしろ、あたかも聞こえるかのような、という例が圧倒的に多い。夏が終わり、冬を迎えるまでの日々なら、何時でもどこでもよさそうだ。聞こえて来そうな場所は身近にあり、“ヒト絡み”が目立つ。そういう中にあってこの句は遥かな「天空の城址」をもってきた。
 近年、有名になってきた兵庫県朝来市の竹田城と思われる。朝来山(標高五七五叩砲涼翳△砲△蝓⊆?佞了海覆匹らは雲海に浮かんでいるように見えるという。作者はこの城を近隣の山などから眺め、「秋の声」を聞いたのか。いや、ひょっとすると、これは宇宙の彼方の城址からの声かも知れない。(恂)

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