警備員灼くる持ち場を動けずに     大下 綾子

警備員灼くる持ち場を動けずに     大下 綾子

『合評会から』(番町喜楽会)

双歩 ストレートな表現でいいですね。だいぶお年を召したおじいちゃんが年金が足りないんで安い時給でやってるのか。これは一票投じないと。
斗詩子 いま我が家の前が道路工事中です。灼熱の中じっと佇んでいる警備員さんの姿に毎日感動しています。
而云 「動けずに」がどうかと思ったのです。「立ち尽くす」ではどうだろうか。
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 汗を出し切ってしまったような顔が見えてくる。「灼く」という季語をこれほど確かに伝える句はそうそうないだろう。
 「動けずに」がどうかという問題提起にいろいろな意見が出た。私も一旦は「動かずに」の方がいいかなと思った。しかし、じっと読み返してみて、やはり「動けずに」しか無いと結論づけた。この人は「持ち場を離れてはいけない」という命令によって「動けずに」立ち尽くしているのだろう。しかし、そのうちに最早命令なんか超越して、信念のようなもの、あるいはその場に立っていることが習い性となってしまって、「動けずに」居るのではなかろうか。(水)

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