俳句と掛けてカラオケと解く。その心は? 人の下手なのはすぐに分かるが、自分が下手なのは全然分からない――。という訳で、当欄担当の(水)氏も私(恂)も句会では人の句を腐したり、直したりする。仲間は言う。「“みんなの俳句”に添削例を紹介したらどうですか」。その声に応えて当欄を創設した。タイトルは(水)氏の命名によって『おかめはちもく』。「傍目八目」と書いて「ひとのあらはよくわかる」とルビを振ろうと思ったが、この欄では無理らしい。今週から一句ずつ紹介することにした。御愛読のほどを!
『おかめはちもく』
昼飯はぶっかけ汁や夏休み 石黒 賢一
「ぶっかけ汁」でもよさそうだが、「ぶっかけ飯」「ぶっかけ蕎麦」などが一般的なようだ。そこで「ぶっかけ飯」として、気になるのが「昼飯は」である。失礼ながら、平凡にして芸がない。そんなことを呟いていた末に思いついたのが「男なら」である。元・柔道マンの作者に相応しい上五だと思う。
そう直して見て一句を目渡すと、今度は下五がちょっと弱々しい。「夏休み」は三四郎句会の兼題であった。この句は兼題から生まれていたはずで、季語として尊重しなければならないのだが、身の内の「直しの虫」が収まらない。炎暑、猛暑、炎熱、日盛りなどを並べていたら、ある季語が浮かんで来た。
(水)氏が番町喜楽会の八月例会に兼題として出した「灼(や)くる」である。男なら灼けつくような日でも、まなじりを決して戦いの場に臨まなければならない。よし、これだ。「男ならぶっかけ飯ぞ灼くる日は」。明らかに直し過ぎの句を眺め、私は作者らとの夏の柔道合宿を思い出していた。(恂)
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