電線の影黒く落つ土用かな 大熊 万歩
『合評会から』(日経俳句会)
臣弘 「暑いなあ」という感じが伝わってきますね。ぎらぎらと照りつける道に電線の影が黒く映っているというんですからね・・。ただ、電線の影なんて映るのかなと、ちょっと疑問を抱いたんですがね、感じがよく出ているんで取りました。
正裕 私も土用の感じがよく表現されていると思いました。ただ影が黒いのは当たり前ですからね、「黒く」とまで言わなくてもいいんじゃないかと思います。
弥生 私はこの「黒く落つ」というのが効いていて、土用らしくていいなと思いました。
てる夫 土用の真っ昼間、太陽が真上にあって、影が真っ直ぐ黒々と落ちているという、この最も暑い時刻をよく詠んだものだと。
而云 電線の影はほとんど見えないでしょうね、電話線なら映る。
二堂 物理的に言えば、電線の影も必ず映ってるはずです。
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電線の影が道に映るかどうかで句会はひとしきり賑やかになった。「電柱の」とすれば間違いはないのだろうが、作者は電線にこだわりを見せている。作者には影がはっきりと見えているのだ。土用照りの感じを印象深く伝えている。(水)
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