泣き止まぬ次女と三女の夏の夜     大平 睦子

泣き止まぬ次女と三女の夏の夜     大平 睦子

『季のことば』

 季語には「本意」(ほんい)というものがある。そのものの本質、特性、言い換えると、もっともそれらしいと万人が思うような在り方である。たとえば「夕立」の本意はと言えば、「急に降り出して間もなく止み、その後は涼しく蘇生の思いを抱かせる男性的な雨。慌ただしさ、驚き、豪快、爽やかさなどを感じさせるもの」といったところであろう。そこで、句の中に「夕立」と置けば、そうした感じは全て言い尽くしたことになる、というのが俳句作りの約束事だ。
 さて、「夏の夜」という季語だが、「夕立」のようにはすっきりと本意が掴みにくい。常識的には、昼間の炎暑から一転涼しい風が吹き、澄み渡った空には星や月が浮かぶといった「気持の良さ」を表すのだが、そうとばかりも言えないのが難しいところだ。暑苦しく、寝苦しいのもまた夏の夜の特徴だからである。
 この句は暑苦しい夏の夜である。次女が泣き出したら三女まで連れ泣きし始めた。長女は知らん顔している。母親は「もう嫌っ、どうとでもしなさい」と開き直っている。「夏の夜」の一面を実によく描き出していて、若いお母さんには悪いが、思わず笑っちゃう。(水)

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