朝餉には皆出払って鮎の宿     植村 博明

朝餉には皆出払って鮎の宿    植村 博明

『合評会から』(日経俳句会合同句会)

智宥 六月一日の鮎解禁日には当たり前の風景で、釣り宿は皆こんなもの。うまく拾ったなあと思います。
大虫 釣り人は夜明け前からはやる心を抑えかねている。宿は朝食をおにぎりにしてくれるのじゃないのかなと思うが。
而云 これは宿の親父なんだよ。皆出払った後、ひとり朝ご飯を食べている。
綾子 同宿の人たちは早々に鮎釣りに出かけて行った、という句ですね?景の切り取り方、詠み方ともに達人とお見受けします。
万歩 早朝の鮎の宿の澄んだ空気が伝わる。
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 鮎解禁日の釣宿の様子をうまく詠んでいる。悠長に朝飯を食べる客なんて居やしない。宿が用意した握り飯をぶら下げて、よーいドンの感じで出かけるのだ。宿の親父の様子といううがった見方もあったが、誰でも無い、いわば天の神様にでもなったような感じで、さあーっと空っぽになった鮎の宿を高みから眺めた景と受け取ったらどうであろうか。(水)

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