夕立に思わず笑う見ず知らず     鈴木 好夫

夕立に思わず笑う見ず知らず     鈴木 好夫

『この一句』

 夕立は梅雨明け後、と思いがちだが、この数日、テレビの天気予報では「積乱雲が近づいたら、大きな建物の中へ避難」などと「夕立への注意」を繰り返している。歳時記によれば「夕立」は初夏、仲夏、晩夏のいずれも「OK」の「三夏」とされてきた。昔からこの季節は夕立の時期でもあったのだ。
 低気圧が列島を縦断して行くこの数日、句のような夕立の情景がどこかにあったに違いない。ビルの入り口か、駅の改札口付近かも知れない。もちろん雨宿りの一場面である。見知らぬ二人が肩を並べ、もの凄い雨脚を見ながら笑い合っているのだ。顔を見合わせて、「これは参った」「傘は全く役に立ちません」。
 夕立の激しい降りようは古来、さまざまに言い慣わされてきたが、「笑い」によって表現したのが何より珍しく、面白い。どっと来て、さっと去って行くのもまた、夕立の特徴である。「止みましたな」「ではまた」・・・などと言いながら、二人が別れていく場面までを想像し、独りで笑ってしまった。(恂)

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