聖岳天に座りて夏の月     野田 冷峰

聖岳天に座りて夏の月    野田 冷峰

『合評会から』(番町喜楽会)

而云 聖岳(ひじりだけ)は南アルプスにある。岳が天に座っている…雄大ですねぇ。
可升 「天に座る」がいい。「聖」と「天」がよく響きあっている。
てる夫 かっこいい句ですねぇ。
春陽子 「聖」が「天」に座るとは。うまいですねぇ。
正裕 「天に座りて」は「夏の月」が座ってるとも読めますね。確かに雄大な感じがします。
          *       *       *
 この作者は感情ほとばしるままの、生の言葉をぶつけた句が特徴で、時にそれが強すぎ押し付けがましい感じを与えることがある。しかしこの句は抑制が利き、聖岳が揺るぎなく「天に座っている」と詠み感動をしっかりと伝えている。
 俳句界には「景が大きい」という妙な褒め言葉があり、それに引きずられていたずらに雄大な景色を詠めばいいという誤解がはびこる。結果、銭湯のペンキ絵のような句が吐き出されるのだが、この句のように巧まずして大景が描かれたのを見ると、ほっとして嬉しくなる。(水)

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