円覚寺の静寂破り閑古鳥       印南 進

円覚寺の静寂破り閑古鳥       印南 進

『季のことば』

 次の句会(三四郎会)の兼題候補に「郭公」が挙がった時、数人から「えーっ」という声が上がった。見たことも聞いたこともないから作りにくい、ということである。確かに近年、東京の住宅地周辺で鳴き声は聞こえない。しかし「ゴルフ場で」「山に行った時」という人もいて、兼題に決まった。
 歳時記の傍題「閑古鳥」(カンコドリ)が話題になった。「カッコウ」のイメージに合わない、というのである。日本人は、スウェーデン人作曲の「カッコウワルツ」によって、郭公という鳥を思い描くようだ。芭蕉ら江戸時代人の抱いた侘びしげな想いは、現代人にそぐわなくなっているらしい。
 作者はいま、鎌倉の自宅で病後のリハビリ中である。散歩の途中、円覚寺近くで「カッコウ」の声を聞いたのだ。「早く句会に出たい」という思いはあっても、東京へ出て行くのは少し先のことになる。句を詠んでも、欠席投句を続けねばならない。「閑古鳥」を用いたのは、そんな気持ちの表れだろうか。(恂)

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