夕立やころがり出でしだんご虫 大沢 反平
『この一句』
夕立も大夕立と言った方がいいような激しい降り方で、辺りがたちまち水浸しになる。溝の中や石の下にいたダンゴムシが慌てて這い出して来た。「ころがり出でし」というのが可笑しい。
実際ダンゴムシというのは滑稽な身体をしている。蛇腹型の固い殻に覆われ、腹側には夥しい数の小さな足がついており、それを懸命に動かして這いずり回って、ゴミや虫の死骸を漁る。時には丹精込めている野菜の芽を食ってしまう悪さもするが、自然界の清掃係として貴重な存在である。しかし、その形が不気味で汚い感じがするせいか、ご婦人方にはすこぶる不人気である。
しかし人を噛んだり刺したりすることもなく、ごく大人しい虫だ。外敵に襲われたり、怖い目にあったりすると、ころころっと丸まって銀鼠色の玉ころになってしまう。それが面白いと、子どもの頃は石を引っ繰り返してはダンゴムシを捕まえ、掌に転がして遊んだ。今どきの子どもはそんな遊びはしないのだろうか。とにかくこの句はそうしたダンゴムシの様子をしっかり掴まえている。(水)
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