反射炉は直立不動夏に入る 玉田春陽子
『この一句』
「伊豆・韮山(にらやま)の反射炉。江川太郎左衛門――」。「反射炉は」という上五を見たとたん、反射的に思い出した語である。小学校か中学校の試験に出たのではないだろうか。実物を見たのは社会人になって後のこと。四角柱(四本か)が段々に重なって立つ反射炉の姿がぼんやりと浮かんでくる。
高さは十四値召蠅世箸いΑG鬚辰櫃ぐ?櫃残っているが、薄茶色かも知れないし、レンガ積みだったような気もする。しかし不思議なことに、その存在感だけが初夏の青空の中に立ちあがっているのだ。句の「直立不動」の語を見て、「そうだ、その通りだった」と思わざるを得なかった。
ペリー来航などで国が揺れる頃、幕府の海上防衛を担った江川太郎左衛門。代々・韮山の代官で砲術の大家で自ら大砲の鋳造を目指した。浦賀の与力・中島三郎助と並ぶ旧幕側の傑物だが、坂本竜馬ら倒幕側の志士に比べると余りにも影が薄い。「直立不動」から、そんなことまで考えてしまった。(恂)
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