夕霞はやばや灯る峡の町      大倉悌志郎

夕霞はやばや灯る峡の町      大倉悌志郎

『この一句』

 谷間の町は周辺が山また山だから、夕日が西の山に早く落ちて、黄昏も早い。夕霞に包まれた町には早くも明りが点々と灯っている。そんなノスタルジックな風景を詠んだこの句、どこかで見たなぁ、と思っていたら、一つの町が浮かんできた。福島・会津盆地の西端に位置する会津坂下町であった。
 新潟・小出(魚沼市)発の只見線に乗り、終点の会津若松に近づいた頃。車窓左手の山間に忽然と大きな街が出現したのだ。「アイヅバンゲ」という町名はかつて、都市対抗野球に出場したチーム名によって知っていた。立派な町だと思いつつ、夕暮の中に広がる市街の様子を見つめていた記憶がある。
 このような大きな町、小さな町、村が全国にたくさんあるはずだ。眺め渡す視点もいくつか考えられよう。峠から、町中の四つ角で・・・、列車の窓から、もけっこう多いかも知れない。この句を見れば、人それぞれに「我が峡(かい)の町」を思い描くのではないだろうか。これまた俳句、である。(恂)

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