指揮棒のぴたりと止まり卒業す 廣上 正市
『合評会から』(日経俳句会)
智宥 「仰げば尊し」かな。「指揮棒がぴたりと止まり」オレも卒業だと思ったんだ。うまいことを言うなぁ。
而云 そうですね。「仰げば尊し」は「いざさらば」で終わる、その瞬間が卒業なんだ。
阿猿 卒業することの一点を指揮棒で具体化したのがいいですね。
光迷 「ぴたりと止まり」ですべてがうまくいったという、気持ちのいい句です。
弥生 コンサートに行って、素晴らしい演奏の指揮棒がぴたりと止まる。心の澱が消えて、次のスタートが切れる。そういう意味の「卒業」なのかな、とも思いましたが。
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卒業式で「仰げば尊し」が歌われなくなってきたという。歌詞の難しさがその理由だそうである。なるほど「いと疾(と)し」とか「やよ、励めよ」など、非常に古い。今の小・中学生では最初の「仰げば尊し」から、最後の「今こそ別れめいざさらば」までの全部が分からないかもしれない。しかし、とも思う。この歌詞の全てが、俳句作り、俳句鑑賞に必ず役立つ。俳句は今も学校教育の一端に加わっているのだ。(恂)
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