ローカル線景色ゆるりと薄霞     水口弥生

ローカル線景色ゆるりと薄霞     水口弥生

『この一句』

 ローカル線なら一両から三両編成までだろう。色の違った二両連結に乗った記憶もある。一時間に一本、通勤、通学時間が終われば乗客は一両に二三人。ガタンゴトンと、のんびり動いて行くが、この句は薄霞のかかった眺めを「ゆるり」と形容して、列車と風景の一体感を見事に表現した。
 定年後の年金世代にローカル線ファンが増えているらしい。時間はたっぷりあり、新幹線や特急より運賃がかなり安い。いわゆる「鉄ちゃん」とは違って特別な目的がなく、絶景に出会えば小さなカメラで一枚撮り、あとは自分の目で風景を楽しむだけ。作者はそういう一人なのか、と思ったが・・・。
 もしかしたら違っているかも知れない。「霞」が兼題の句会で、もう一句「逢ひにゆく道のしるべの霞けり」を出していたのだ。前句の続きで、田舎の駅を降り、ゆっくり歩き、何らかの目印を探している、と勝手に想像した。「逢ひに」行くのは人か、思い出の場所か。ともかく独り旅のようである。(恂)

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