しゃぼん玉別れと出会いくり返し 藤野十三妹
『この一句』
「別れと出会い くりかえし」。どこかで聞いたような、と思い、ネットで調べたらすぐに分かった。中島みゆき作詞、作曲、歌の「時代」であった。「そんな時代もあったねと いつか話せる日が来るわ」。「めぐる めぐるよ 時代はめぐる 別れと出会い繰り返し」。これは本歌取りの句なのだろう・・・・
と思ったら、違っていた。作者によると、中島みゆきという歌手の名前はかすかに知っている程度、というのだから、まさにびっくり。彼女は実はワグナーの楽劇の研究家である。それなのに(というのも変だが)、日本の歌では北島三郎や都はるみなどの“ド演歌”しか聞かないほどだという。
即ちこのフレーズは作者の作であった。俳句では酷似した先行句があれば敬意を表して、自作を取り下げるのがマナーだというが、この場合はどうか。「偶然の本歌取り」くらいに妥協すればいいと私は思う。「しゃぼん玉」と合わせた句は、もう一つの新たな魅力を生み出しているのだから。(恂)
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