初富士のすぐそこにある東京湾 大沢 反平
『この一句』
テレビの天気予報を見ていると、晴れた日には必ず一度は画面に富士山が写る。関東各所にある定点カメラからの映像だが、ビル街の向うに富士が現れると不思議に嬉しくなる。外出中、電車の窓やビルの高層などから見えた時はさらに嬉しく、人が見ているのを見ると、これまた嬉しくなってしまうのだ。
句の富士は千葉県から望んだものだろう。東京湾を越えて西の方に富士が見える。「すぐそこに」は、いろいろな解釈が出来るが、「手に取るように」「目の当たりに」くらいに受け取ればいいのではないだろうか。中国人の友人が「富士山って、すぐそこにあるんですね」と語っていたことを思い出す。
国を代表し、全世界に知られる名山が首都圏から見えるのは富士山くらいのものだ。ある国の学者が日本に来るたびに新幹線に乗っているが、いつも天候が悪く、富士山を見たことがない。遂に彼は言った。「富士山って、実在しないのだろう」。実物の初富士を見た人は、初夢に見た人より幸福である。(恂)
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