わが雑煮まる餅に鰤八十年 藤村 詠悟
『この一句』
雑煮の作り方は列島を東西に分けるフォッサマグナ(大地溝帯)で異なっている、ということは何となく知っていた。今回、改めて確かめてみたら、全くその通り。ある“雑煮地図”によると「糸魚川(新潟)-静岡構造線」とも呼ばれる大断層で、丸餅の西型、角餅の東型に画然と分かたれていた。
実際は入り乱れているはずだ。現に句の作者の「わが雑煮」は明らかに関西型だが、少なくとも現在は関東に住んでおられる。しかし丸餅にブリを入れるという雑煮によって、ご自分のアイデンティティーを確かめており、毎年、正月になると遥かな祖先や故郷などに思いを廻らしておられるのだろう。
この句を見たら「わが雑煮」を思わずにいられない。角餅を焼き、醤油味、鶏肉に小松菜。生まれて以来、相も変わらぬこの雑煮に感慨の湧いたことなど一度もなかった。ところが調べて見たら「江戸型」と呼ぶそうで、正直、唖然とした。よくもまぁ、七十八年をのんびりと生きてきたものだ。(恂)
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