初富士をうす紅に染め初日の出   今泉 而云

初富士をうす紅に染め初日の出   今泉 而云

『この一句』

 中野区の住人である作者は、近所の平和の森公園へ初日の出を迎えに行く。住宅地の真ん中の小高い丘で、東側のビル群の間から初日が上がって来る。それを拝んでぐるりと反対側を向くと、遥か西方に初日を浴びて薄紅に染まる富士山が見える。東京二十三区内では今や数少ない初日初富士遙拝所である。
 日本人は春夏秋冬、微妙な四季の変化を身近に感じながら生きている。太陽と月の移り変わり、星の運行、風の向きと強さ、気温の上下、そして、そうした気候の変化につれて移ろう草木の様子や獣の動きを敏感に捉え、それらと一体になって暮らす、世界でも稀な人種である。挨拶言葉にこれほど「お天気」の具合を込める人種は地球上日本人しかいない。
 「初日の出」は万物生まれ変わりの象徴。昇る太陽に手を合わせ、自らの脱皮を願い、加護を願う。そして、霊峰富士を仰ぐ。そうやって身も心も浄め、若水を汲み、屠蘇を祝い、家内安全を祈る。日ごろゲームにうつつを抜かしている子供達が、元旦の一時ばかりは神妙なのが面白い。(水)
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 明けましておめでとうございます。「みんなの俳句」も今年で9年目を迎えました。「俳句振興」を事業の柱に掲げるNPO法人双牛舎が平成20年1月1日にこのブログの発信を開始、満8年で会員の皆様の名句1900句を紹介してきました。この間ざっと7万人の方々がこのブログを訪問されました。今年も引き続き名句を掲載して参ります。どうぞよろしくご愛読下さい。
 双牛舎ブログ「みんなの俳句」世話人 今泉而云 大澤水牛

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