落葉踏む音の届きし足の裏        宇佐美 論

落葉踏む音の届きし足の裏        宇佐美 論

『この一句』

 三四郎句会の面々が東京都庭園美術館へ出かけたミニ吟行での一句。JR山手線・目黒駅に近いので目黒区かと思いきや、地名は渋谷区白金台と格好がいい。アールデコ洋式の粋を尽したと言われる邸宅と和風、洋風の庭とは別に「芝生広場」があり、大都会の中心部と思えない静かさに満ちていた。
 芝生広場の中央には大きな紅葉が枝を広げていて、落葉がはらはらと散り止まない。芝生の上には落葉が何重にも重なり、好天続きでよく乾いたためか、歩くとパシパシと音がした。「落葉を踏む音が聞こえる」までは誰でも考えるが、この句、「足の裏に音が届いた」と気づく“柔道家”のセンスに敬服した。
 旧朝香宮邸として知られ、第二次大戦後の一時期は外務大臣公邸となり、外相兼務の首相・吉田茂が三年間にわたって使用していた。ちょうど第三次内閣の頃。ワンマン・吉田が難問に取り組んでいる時など、芝生の庭に出て、落葉を踏みながらゆっくりと歩を運ぶこともあったのではないだろうか。(恂)

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