帆船に帆のかかる日や秋高し 星川 佳子
『この一句』
立冬から半月過ぎて、当欄でも冬の句が出始めたが、個人的な好みから載せておきたい秋の句があった。上掲の「帆船に」である。秋空に掲げられた船の白帆は、多くの人の心に鮮やかな映像を結んでいるに違いない。特にヨット(小帆船)などに乗ったことのある人(私を含めて)にとっては・・・。
帆船やヨットはいつも帆を掲げているわけではない。停泊の際は風の影響を避けて、帆はたたんでおく。大きな帆船なら、いざ出帆の時、大勢の船員が縄梯子を使ってマストに上り、帆を張って行く。普通の人間には恐ろしい限りの仕事だが、海の男たちの誇りに満ちた仕事であるに違いない。
この句の帆船は引退して港に繋がれていて、特別な日だけ帆を掲げるのかも知れない。かつて友人のヨットに乗っていた頃、遥か沖行く大型ヨットを何度か見掛けた。練習船か、レジャー用か、ともかく格好がよかった。海に出なくなった今、帆船が帆を上げるところだけでも見たい、と思っている。(恂)
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