地蔵撫で秋草撫でて風去りぬ   流合 研士郎

地蔵撫で秋草撫でて風去りぬ   流合 研士郎

『合評会から』(日経俳句会)

昌魚 秋の風の流れを表して、撫でるようにというのが面白い。「地蔵」と「秋草」を並べているので景も出てくるし、秋っぽくていいなと。
正 風の動きを鮮明に描写している。「撫で」のリフレインがいいと思いました。地蔵と秋草で寂寥感にうたれる。
冷峰 秋の風そのものですよね。さっと撫でていく。「撫で」というのが秋風にぴったり。地蔵を撫でるのが気に入った。
明男 いたずらっ子が風になって、地蔵、秋草を撫でて逃げて行った。そんな情景を思い浮かべるような。しかもスローモーション映画でも見ているような感じがしました。
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 地蔵さんの頭を撫でて秋草を撫でてと、そう順序良く行くものではなかろうが、いかにも村はずれの晩秋の光景が彷彿として甦る句で、懐かしさを抱く。こういう景色は今でも日本中至る所にあり、そして、日本人の心の中に永遠に棲み着いている。(水)

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